日時
日時 2023年6月24日(土)
場所 立教大学池袋キャンパス
テーマ
〜社会学の現状からSociety5.0時代の体育社会学を語る〜
開催趣旨
体育社会学は、日本体育学会の専門領域として組織化されていた際にも、幾度となく学問的独自性をめぐって議論してきた。そして、体育社会学とスポーツ社会学や教育社会学との分水嶺はどこにあるのか、またはどのような包含関係になっているのかを問うてきた。本学会がこうして独立学会として成立した今、過去の議論を踏まえながらも、これからの在り方が改めて問われている。このような背景を受けて、改めて学会の立ち位置を確認しながら、未来志向で体育社会学を社会学する場を拓きたい。
近年、体育をめぐっては様々な制度的変更がなされようとしている。それは、運動部活動改革やオリンピック・パラリンピック教育、体育という教科名の変更に関わる議論等も含め多岐にわたっている。これらの動向は、教員の働き方改革や政治的な意図などの社会的要請に対応するものであったりするが、本学会として問わなければならないことが山積されている。もちろん、このような変化は体育・スポーツ界に留まらずAIの台頭によるSociety5.0時代の影響によって今後さらに加速すると思われるが、社会学そのものも変容している。ブラヴォイ(Burawoy,2005)は、アカデミズムの外にも開かれた公共社会学という領域を示し、社会的事実に対して批判や再解釈のみならず、社会的事実としての公共性を記述し、社会学で培われてきた諸価値を公共圏の中で公衆との対話を通して、社会を構築しようとする営みの必要性を説く。そこでは、「何のための知識か」という観点と「誰のための知識か」という観点によって社会学の研究営為を、「専門社会学」「批判社会学」「政策社会学」「公共社会学」という4つに分析上の区分を設ける。そして、このように社会学的知の多様性を広げ、交流することの重要性を捉える。こういった流れは日本の社会学会にも少なからず影響を与えており、社会学の現状に関する大局的な認識をしながら、体育社会学会は、社会的にどのような役割が期待され、我々には何ができるのかを会員相互の対話を通して考えていきたい。
今、まさに変化しようとしている体育界に対して、AIでは問わない内容も含めて体育社会学的な視点から捉えるために、本セッションはダイアログ・フォーラムの形態をとることとした。学会員総出で「何を問わなければならないのか?」を議論する場を設ける。具体的には、本セッションの前半40分を井上俊先生に「社会学の現在と『公共社会学』」と題しキーノートレクチャーをしていただく。日本の社会学の現状から「公共社会学」という発想の意味について考えた後、5名程度のチームに分かれ「教科としての体育」、「部活動を含む学校体育」、「学校という場を離れた社会体育」というテーマごとに体育社会学としていかなる問いがたつのか、何が語られて来なかったのかについての議論を行う。各チームでの議論を共有した後に、テーマごとにファシリテーターから10分ずつ論点整理をしていただき、最後に全体でのディスカッションを行う。
このようなダイアログ・フォーラムにすることによって、体育社会学会としての船出を全会員の能動的な参加によって、漕ぎ出したい。是非活発な議論を展開していただくことを期待したい。
登壇者
キーノートレクチャー
井上俊(大阪大学名誉教授) 「社会学の現在と『公共社会学』」
コーディネーター
原祐一(岡山大学)
ファシリテーター
石坂友司(奈良女子大学)・工藤保子(大東文化大学)・稲葉佳奈子(成蹊大学)